チャカ・カーン

“チュニジアの夜”という、ディジー・ガレスピー作のあまりに有名なジャズ・スタンダードがある。世の中にゴマンとヴァージョンがある名曲中の名曲で、ジャズ好きな人間なら知らない者はいない。ジャズ愛好家でない私でさえ、ディジーの正調を含めいくつかのヴァージョンを聴いたことがある。

このジャズ・スタンダードに詞を付け、ブラコンに仕立て上げちゃったシンガーがいる。チャカ・カーンだ。81年のアルバム、“恋のハプニング”に収録。私が最初に聴いたチャカのアルバム。私はチャカ・カーンでブラコンに目覚めたと言っていい。

チャカを聞く前、ロックな奴だった私はブラコン自体に興味がなく、ブラコンというジャンルがどんな音なのかさえ漠然としかわからなかった。友人が先輩に誘われブラコンのバンドやると聞いても、「はー、そうなんだ。」くらいにしか思わなかったし。ある日、そのブラコン・バンドのリハを見ることになりスタジオにお邪魔した。そこでやっていたのがチャカの“チュニジアの夜”を初めとする旧き良きブラコンの名曲たちだった。

・・・しかし、知らないってのは怖いね。「音楽を聴かず嫌いになっちゃいけない!」とは思っていても、にわかな知識やミョーな先入観が先行しちゃって素直に受け入れることができないタチなんだよね。これで今まで結構損してきてる。チャカ・カーンなんてのは、つまんないダンス・ミュージックやってる黒人のおばちゃんくらいにしか思ってなかった。で、そのバンドのリハ見て「やられたァ!」と思ったさ。バンド自体かなり上手いバンドで、ギターは早稲田の某サークルから引っ張ってこられた奴だった。フェンダーUSAの白いストラト使ってたことまでハッキリ覚えている(笑) 名前まで覚えているが、書いてもしょーがないので書かない。それ以上に彼らのやってた楽曲のかっこよさよ。「こーいうのを俺は今まで聴かずにいたのか!」と、己の未熟さを痛感したものだった。

このとき彼らが練習していたのがチャカ・カーンの“チュニジアの夜(And The Melody Is Still Lingers On)”であった。他にはアニタ・ベイカーとかやってたっけな。アレンジは「なるほどな」という感じで、4ビートのオリジナルの特徴をうまく生かしながら16ビートにアレンジした感じ。イントロの、4ビートだとベースが奏でるリフをチャカのヴァージョンはローズでやっている。そしてソロはなんとハービー・ハンコックだ。クラヴィター(ショルダー・キーボードの一種)を使っている。ベースはエイブ・ラボリエル、ムーグはデヴィッド・フォスター、ドラムはジノ・ヴァネリのアルバムにも参加しているケイシー・シュレール。作曲者であるディジー御大も参加している。彼らのプレイも文句なくいいんだが、私はロニー・フォスターが弾くローズのバッキングが気に入っている。特に凄いことをしているわけではなく、地味にバッキングをやっているだけなんだが、刻み方とヴォイシングが気持ちいいんだよね。ブレイク・ソロはチャーリー・パーカーの超絶的なフレーズをハンコックがフル・ユニゾンで弾き切っている。あれ、ギターでやったら強力に難しそうだな。コピーしたギタリストもいることだろう。私はやらなかったけど。

このときの出会いがきっかけで、私もチャカの曲をやりたくなった。アルバムを買って本人の歌唱を聴いてみる。それまで友人バンドのヴォーカルの歌でしか知らなかったのだ。第一印象が「えらいヴァイタリティのあるシンガーだなァ」というもの。しかも声がファンキーでアーシー。高音部の張り裂けるような歌い方がインパクト大。日本人の女性シンガーであの迫力が出せる人はいないんじゃないだろうか?私はチャカに関して“上手い”という印象はあまりない。でも“凄い”とは思っている。ライヴ向きのシンガーだよね。そして面子を募って学園祭でやることになるんだが、ヴォーカルに後輩の女の子を誘ったものの、正直「こんなのできっかなァ」って不安はあった。しかしリハに入り、思ったほどヤバくはなかったのでやることにした。そのときやった曲は、やはり“恋のハプニング”収録のビートルズ・カヴァー“恋を抱きしめよう”と“あなたに夢中”。確かあのときは3管編成のブラス・セクションも入れてやったんだよな。“あなたに夢中”…私にとってチャカのベスト・チューンかもしれない。アルバム買って、“チュニジアの夜”以上に気に入ってしまった。アナログな感じのシンセのリフとドラムのパターンがかっこいい。あのシンセの音、今では聴かない音だな。多分プロフェット5かなんかだろう。あの時代の名シンセね。

“恋のハプニング”の次に買った“フィール・フォー・ユー”は結構がっかりした。方向性が全然変わってしまっている。レコード・スクラッチやラップを入れたり、もはやブラコンというよりダンス・ミュージックとなってしまっていた。だからほとんど聴くことなく終わった。一応まだ持ってるけどさ。AORもブラコンも83~4年くらいで音が変わった気がするんだよな。82年まではいい。“恋のハプニング”が81年、“フィール・フォー・ユー”が84年。3年で音がガラッと変わっちゃってるの。なんなんだろ?機材や録音技術が関係してるんだろうか?グレイドンのプロデュース作品もめっちゃつまんなくなっちゃったし。

しかし83年発表の、チャカが所属していたバンド・ルーファスの最後を飾ったライヴ・アルバム“サヴォイでストンプ!”、これはめちゃくちゃいいのでチョーお勧め!これはよく聴いたな~。これこそブラコンだと言いたい。ドラマー、ジョン・ロビンソンも冴えまくり。音が変わりつつあった83年に出た痛快極まりない一撃。チャカを聴くなら絶対押さえてほしい名作☆ つーか、ブラコン・ファンは聴いとくべきだね。



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この記事へのコメント

にゃっ太
2010年10月05日 16:03
チャカ・カーンは黒い系のテッパンでしょう!演歌でいえば小林幸子や八代亜紀みたいな人。
アフリカ系特有のあの声、貫禄ある歌いっぷり。右に出るもの無し。上手さではシェリル・リンやアニタ・ベイカーなんかの方が上手いと僕は思うけど、彼女らはチャカ・カーンの後継的な感じ。やっぱりチャカ・カーンは大御所。たしかに”凄い”の一言ですな(^_^)。
2010年10月05日 21:14
はい、まさしくテッパン中のテッパンですね。あの時代はディスコ系のドナ・サマーなんてのもいましたが、私はチャカの方がブラコンしてて好きです。曲のかっこよさが違う。“アイム・エヴリー・ウーマン”は最初ホイットニーのヴァージョンで聴いたんですが、あとになってチャカのオリジナル聴いて痺れましたよ。「おおう、この音だよ~!」って。もう、雰囲気が全然違うんですよね、昔のブラコンは。
2010年10月06日 06:42
アインちゃん、CMは覚えてないけどこの曲は聞き覚えがありますた。サビんとこ聴いて「あー、これか」と。最近のチャカの曲は詳しくなくて ・・・で、調べました。この曲ジェフ・ローバーが絡んでるんですね。いにしえにローバーのアルバム買いましたよ。まだ持ってるはずですけど(笑)

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